Urmas Sisask ”Starry Sky Cycle”

ウルマス・シサスク《銀河巡礼》

2011年にファーストアルバムを出してから14年。ようやくこのシリーズ、ラストアルバムとなる「北極の星空」のレコーディングにとりかかります。

銀河巡礼〜北半球の星空

URMAS SISASK:Starry Sky Cycle No.1    
Northern Sky Op.10

Piano:吉岡裕子 Yuko Yoshioka
2011年11月10日
YSOK -1101
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1. みずがめ座「夢」
2. こぎつね座「不安」
3. いるか座「連鎖ー流星雨のプレリュード」
4. おおいぬ座「性急」
5. かみのけ座「転変ーオーロラ」
6. くじら座「切望」
7. アンドロメダ座「力ー雷雨、虹」
8. うしかい座「渦」
9. うさぎ座「孤独」
10. はと座「動き」
11. おうし座「鮮鋭」
12. へび座「出現」
13. や座「動揺」
14. からす座「風雪」
15. こと座「幸福」
16. 7つの楽興の時「プレアデス」 1. エレクトラ
17. 7つの楽興の時「プレアデス」 2. マイア
18. 7つの楽興の時「プレアデス」 3. タイゲタ
19. 7つの楽興の時「プレアデス」 4. アルキオネ
20. 7つの楽興の時「プレアデス」 5. メローペ
21. 7つの楽興の時「プレアデス」 6. アステローペ
22. 7つの楽興の時「プレアデス」 7. ケレノ
23. おひつじ座「緊迫」
24. へびつかい座「破滅」
25. こぐま座「平和」
26. こいぬ座「混乱」
27. オリオン座「凝固」
28. うみへび座「無限」
29. ペルセウス座「黙想」

(Total Playing Time 67:05)

演奏者より

2005年、エストニアの小さな村ヤネダのアトリエ“音楽と星の塔”で、シサスク氏に直接、レクチャーを受けました。彼が弾くピアノは、星空の果てしない世界にすぐさま連れていってくれるような不思議な響きと、星と音楽を愛する純粋な心に満ちていました。彼のピアノ作品の全ては星空に霊感を得ています。アマチュア天文学者でもあるシサスクの《銀河巡礼~北半球の星空》(1987)はその最初の大作で、22の星座とプレアデスの星の名が付けられた全29曲からなっています。私が彼のことを知るきっかけとなり、出会いにまでつながることになった大切な作品です。彼は、ピアノという楽器を“宇宙のキーボード”と捉え、美しいハーモニーを構成しています。今回の収録では、響きの重厚なベーゼンドルファーModel 275 を使用、音の職人、金森祥之氏の手により、ライヴとはまた違った、レコーディングならではの音の世界をつくり出すことができたと思います。


シサスク氏より

久しぶりだね、ユウコ

ようやくやっとのことで、君から送ってもらったアルバムを聴く時間をとることができたよ。
君と私は、天文学という学問を同じように理解していると感じた。私たちはともに、地球上の音楽について悩み、苦しんでいる。君の粘り強さは、私に新たな力とエネルギーを与えてくれた。君の解釈には深い感銘を受けた。君がより高く羽ばたくことを願っているよ。星々の音楽によって、君は私の精神面を完全に捉えてしまった。私はそのことを幸せに思う。これからも協力していこう。

銀河巡礼〜南半球の星空

URMAS SISASK:Starry Sky Cycle No.2    
Southern Sky Op.52

Piano:吉岡裕子 Yuko Yoshioka

2018年5月1日

YSOK -1802

CDBaby.Com/Indys

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Track List 

CD 1


1. カメレオン座「群がり」

2. はちぶんぎ座「停滞」

3. テーブルさん座「野火ー浄化」

4. とびうお座「変容」

5. ケンタウルス座「啓発」

6. みなみじゅうじ座「悪夢」

7. はえ座「解放」

8. エリダヌス座「前進ー非物質化 "虹の彼方へ”」

9. みずへび座「鮮明なコントラスト」

10. くじゃく座「争いと和解の法則」

11. みなみのさんかく座「二等辺三角形のコントラスト」

12. コンパス座「ブラウン運動」

13. ふうちょう座「調和」



CD 2


14. とも座「静けさ」

15. ほ座「嵐」

16. りゅうこつ座「一陣の風」


銀河幻想曲

17. Ⅰ 大マゼラン銀河

18. Ⅱ 小マゼラン銀河

19. Ⅲ コールサック

20. Ⅳ 宝石箱


21. きょしちょう座「さまよい」

22. インディアン座「幻影ー踊る精霊たち」

23. さいだん座「増殖」

24. かじき座「霧の中の悦び」

25. とけい座「膨張」

26. レチクル座「永遠ー永遠の彼方へ」



(Total Playing Time 90:43)

演奏者より


 私にとって《銀河巡礼~南半球の星空》は、《銀河巡礼~北半球の星空》よりも先に全曲演奏という機会を得て、本格的に取り組むことになった作品でもあります。また2014年8月には、第2回エイヴェレ国際ピアノ・フェスティヴァル(エストニア)にて、シサスク氏と9年ぶりに再会。《銀河巡礼~南半球の星空》全曲によるコラボレーション・コンサートが実現しました。シサスク氏はナレーション担当。途中、アボリジニの民族楽器ディジュリドゥの演奏を披露してくれたり、アンコールではシサスク作曲の《スパイラル・シンフォニー》フィナーレ(連弾)を共演、最後はシサスク氏の「カシオペヤ座」独奏で締めくくられるという興味深いコンサートになりました。

《銀河巡礼~南半球の星空》のレコーディングに踏み切るまでには、《北半球の星空》リリースから6年を要しました。《北半球の星空》制作でもお世話になったエンジニアの金森祥之氏が次作をつくりましょうとずっと背中を押し続けてくださったこと、同じく前回のレコーディングでもお世話になった調律師、望月治さんが専属で調律している山梨市花かげホールのベーゼンドルファー#275、そして会場の響きが素晴らしく、シサスク演奏にぴったりだと感じたこと・・などがあって、ようやくお尻に火がつきました。


 ジャケットの美しい写真は、星景写真家の有賀哲夫氏による写真です。この作品の日本初演(2005年)の折にもチラシに使わせていただいた思い出の写真を再びここに使わせていただきました。有賀氏とはこれまで、《銀河巡礼》のコンサートや八ヶ岳高原音楽堂などでのシサスク作品を含めたプログラムを星の映像やお話と数多くコラボレーションしてきました。《北半球の星空》のジャケットの写真も有賀氏による写真です。


今回のアルバムは、前回のアルバム《銀河巡礼~北半球の星空》とは異なる環境で収録しています。山梨市花かげホールの豊かな反響を最大限に生かし、また、この曲集で多用されている内部奏法の響きを捉えるために、ピアノの内部にもマイクを向けました。編集の段階で、リバーブの操作は加えていません。


ブックレットには、物語の要約のほか、シサスク氏のプロフィール、内部奏法をしている場面の写真、さらに南半球の星図も掲載しています。星座の図は、アマチュア天文学者でもあるシサスク自ら、各曲ごとに楽譜に書き添えていますが、彼の描くの星座の形は一般的なものとやや異なる部分があります。今回、私はシサスク氏の描いた星座の形を使って「天の南極」を中心とした星図を作りました。星座の位置関係を把握していただくと、曲順についてや、物語に取り入れられているアボリジニ神話、ギリシャ神話についての興味がより深まると思います。馴染み薄く、北半球からは見えない星座ばかりですが、シサスク氏の音楽とともに探訪し、南半球の星空に思いを馳せてみてください。

銀河巡礼〜赤道の星空  狼と蝶

URMAS SISASK:Starry Sky Cycle No.3   
Equatorial Sky  Wolf & Butterfly Op.155


《銀河巡礼〜赤道の星空》は「狼と蝶」として二人の日本人ピアニスト、秋場敬浩と吉岡裕子に献呈された異色の作品。88星座すべてを一望できる地から選ばれた星座に、作曲者編纂によるギリシャ、ヒッタイト、アフリカ、中国、パプアニューギニア、ネイティブ•アメリカンの神話や星界物語が付随。時を超えて天•地•人、すべてが繋がるシサスク渾身の傑作!

Piano:吉岡裕子 Yuko Yoshioka

2020年9月9日

YSOK -2003

CDBaby.Com/Indys

Total Time 77:45

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Track List 


1. ほうおう座「動揺する蝶」

2. ろ座「色彩の神秘」

3. ちょうこくしつ座「眠れる美」

4. ちょうこくぐ座「寺院への旅」

5. ぼうえんきょう座「優しいタッチ」

6. けんびきょう座「優しい応え」

7. ろくぶんぎ座「陽気な狼」

8. ポンプ座「強さを増して」

9. てんびん座「ティンタブルの触手」

10. さそり座「・・・威力」

11. おおかみ座「狼にとっての蝶」

12. やぎ座「うぬぼれ狼」

13. コップ座「クララの爪」

14. がか座「ちょっとロマンチックに

15. たて座「鋭い剣」(トッカータ)

16. みなみのうお座「孤独に漂って

17. うお座「悟りを得て」(星空への賛歌)

18. らしんばん座「夢見る者の幻影

19. じょうぎ座「クイッティ・フイッティ」

20. つる座「忍び寄る狼」

21. みなみのかんむり座「魔法の真珠

22. いて座「さらなる未来へ」



1 Phoenix - Disquiet Butterfly

2 Fornax - Mystery of Colors

3 Sculptor - The Sleeping Beauty

4 Caelum - Journey to the Temple

5 Telescopium - Gentle Touch

6 Microscopium - Gentle Answer

7 Sextans - A Jolly Wolf

8 Antlia - Increasing the Power

9  Libra - Tintabul Tentacles(Scorpion’s Mouthparts)

10 Scorpius - ...Force

11 Lupus - A Butterfly for a Wolf

12 Capricornus - A Vain Wolf

13 Crater - Klara’s Pow

14 Pictor - A Little Romantic

15 Scutum - A Sharp Sword (Toccata)

16 Piscis Austrinus - Drifting alone

17 Pisces - Got Enlightened (Anthem to the Starry Sky)

18 Pyxis - A Dreamer’s Visions

19 Norma - Kuijti-Huijti   (Life beyond Pleiades)

20 Grus - The Creeping Wolf

21 Corona Australis - The Magic of Pearls

22 Sagittarius - Forward to the Future



制作:有限会社オアシス 

ディレクター:金森祥之 

レコーディング・エンジニア:飯嶋慶太郎 

マスタリング・エンジニア:田中三一 

技術協力:風間 萌 

使用ピアノ:ヤマハ C7 

調律:望月 治 

カバー写真:トゥンチ・テゼル 

写真:金森祥之 

レイアウト:千葉綾子 

エストニア語翻訳協力:小玉ウーラ 

解説・星図:吉岡裕子 

録音日:2020年3月27日、28日 

録音場所:Oasis studio home




演奏者より


 2020年3月8日は《銀河巡礼》の最終曲集である「北極の星空」日本初演の日でした。ところが新型コロナウイルスによる自粛が始まり、開催を断念。延期日を決められない中で、できることはないかと考えたのが、今回の「赤道の星空」のレコーディングでした。以前の私なら、体力的にも厳しいこの作品の演奏をレコーディングするなどという気にはならなかったと思うのですが、どういうわけか積極的になり、宣言してから「しまった!」とも思ったのでした。でも勢いは時には大切なようです。

 3月27、28日にレコーディングしたCDのマスタリングは、コロナ自粛の影響で7月にずれ込み、リリースを9月9日と決めました。2020年9月9日はシサスク氏の60歳の誕生日でもあります。2005年にエストニアのヤネダにて、初めて彼と出会ってから15年。今度、再会が果たされるなら、2015年春の彼の初来日以来5年ぶりです。この5年の間に、「赤道の星空」(2016)、「北極の星空」(2018)を完成、全天88星座を網羅する彼のライフワーク《銀河巡礼》が完結しました。「赤道の星空」を書いてくださったシサスク氏への感謝と敬意とともに、このCDを贈りたいと思います。

今回のアルバムは(有)オアシスさんのスタジオhomeにてYAMAHA C7を使用し収録しました。マスタリングエンジニアは、この業界における神のような存在といわれる田中三一氏。光栄なことにマスタリングのみならず、収録までお世話になりました。収録では田中氏自作による独自のマイクを使用。床面に設置した2つのマイクは全体を、ピアノの近くの2つのマイクは細やかなタッチを捉え、クリアで豊かな響きがつくり出されました。スタジオというデッドな空間のため、このピアノの持つ響きの特徴を生かすようなリヴァーブをほんの少しだけミックス時に加えたとのことです。マスタリングには私も立ち合わせていただき、シサスクの音楽について田中さんとディスカッションしながらイメージを膨らませました。最高級のスピーカーから聞こえてくるシサスクの音楽は宇宙に吸い込まれていくかのようで、この作品の素晴らしさを改めて実感できました。

ライナーノーツ執筆はこれまでになく苦戦しましたが、《銀河巡礼》シリーズの中でこの作品だけに付けられた「狼と蝶」というサブタイトル、そして独特な構成についてなどの情報をしっかり残しておきたく、限られた紙面では足りなかったのですが、知人の協力も得て、なんとか良いものになったと思います。

ブックレットには解説、物語の要約のほか、この作品についての作曲者自身による紹介(英訳付き)、そして「南半球の星空」同様、赤道の星図も掲載しています。ジャケット写真(表裏)にはトルコの写真家トゥンチ•テゼル Tunç Tezel 氏の素晴らしい写真をお借りしました。表の写真は南半球の太平洋、クック諸島最南端にあるマンガイアの星空で、いて座とさそり座に向かう天の川銀河の中心、αケンタウリとβケンタウリの明るい星、みなみじゅうじ座、およびコールサックの暗い星雲が写っています。裏の写真はアイザノイ遺跡です。2世紀頃のローマの遺跡で、現在はトルコのアナトリア西部にあるチャブダルヒサール村に点在しています。ここにはカシオペヤ座からはくちょう座への天の川が写っています。
ブックレットの裏表紙には誰かさんが天体望遠鏡を覗く写真が(金森祥之氏撮影)、CD盤を外した面には、シサスク氏が書いてくれた「蝶」のテーマに繋がる小品の写真を載せています。

いろいろな角度から、作品を楽しんでいただけたら幸いです。